シンポジウム前半 「使えなかった非常時の備え」・質疑応答

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使えなかった非常時の備え
千葉県での計画停電による在宅療養生活への影響と対策


伊藤:みなさん、こんにちは。私たち3人は、介助者とお子さんを連れて千葉から参りました。私は「りべるたす」というヘルパー事業所の管理者で、立命館大学の立岩先生のゼミ生でもあって、そういう縁で今日は来ました。三島みゆきさんとご主人とお子さんがいらっしゃるんですけども、三島みゆきさんは2007年にALSだと告知は受け、たぶん2006年ぐらいの発症です。私たちはたまたま3人とも同い年で、まだ介護保険サービスを受けられる年齢40歳に達していません。
 私はヘルパー事業所の管理者として生活していますけれど、障害者自立支援法の重度訪問介護というサービス提供を中心にしている事業所です。千葉県で8つの市町村にヘルパーを派遣していますが、重度訪問介護中心の事業所は千葉では非常に少ないです。私と三島さん宅も遠くて、車で例えば5時のお約束だと3時半くらいに出ないと間に合わないような距離なんです。遠方に派遣するというのが今、千葉ではあんまり重度訪問介護をやっている事業所がないので、そういう状態です。難病患者を中心に派遣している事業所ではあるけれども、私たちが災害にどのくらいのことを備えておけばいいのかと考えてきたかというと、震災前までは停電があったとしてもせいぜい1〜2時間かなという想定しかなくて。もし停電になったときに、とり急ぎ1〜2時間分の電気があれば、あとは医療機関につなげばいいかなあという認識しか持っていませんでした。ところが災害発生時はそれほど停電がなかったものの、その後の計画停電で3時間の停電が1日2回ぐらいあり、想定外でしたので、そこでの苦労をお話したいと思います。
 千葉県は障害者運動がほとんどない地域ですので、在宅で人工呼吸器を使って患者が暮らすことに対し、行政や保健所、病院に理解があるかというと、すごく難しいです。私たちは、痰の吸引ができるヘルパーが多い事業所ですけれど、医療機関との連携が難しく、ヘルパーへの吸引指導を訪問看護師さんにお願いしても、断わられてしまうとか、独特の嫌がられる感じがなぜかあります。在宅の重度障害者をヘルパー事業所として支援することに、行政の方からもあまりいいと言われない。災害時に相談するのも、なかなかしにくい現状でした。

三島正剛:みなさんはじめまして、鎌ケ谷市から参りました三島と申します。私が生活している地域では、家内のような重度障害者の方が何か困ったことがあった時に本当は一番頼りにならなくてはならない行政の方々に相談をする環境というのが、正直できていないんです。
 家内は4年ほど前、ALSという病気だと告知を受けましたが、それは、その時から始まっていて、まず告知が「もうはっきり言って、これから先っていうのは、家族に迷惑をかけ、いろんな人に迷惑をかけて生きていくことになるんだけど、それでもあなたは生きていくつもりはありますか」という内容でした。「マンションや普通の自分の住む家を買うぐらいのお金をかけてこの先、生きていくのか」というようなことも言われて、まずそこでショックを受けたんです。
 当時うちの娘がまだ3歳だったので、1日でも長く家族3人で過ごしていきたいというのが正直な希望だったので、在宅の道を選んだわけです。けれどその時、行政の方から「自宅で在宅療養するということは、ご主人は仕事を辞めてまでやるのが普通なんですよ、それぐらいの覚悟がありますか」というようなことを言われました。そうは言われても私もまだ40歳前なので、当然仕事もしなければ生活していくことはできないし子供の面倒も見なくてはならない。「ヘルパーさんの派遣の時間数をもうちょっと多くしてもらえないですか?」というような相談をしても、「それは在宅をする覚悟が足りない」「自分の奥さんの介護が出来ないのですか? 奥さんへの愛が足りない」というようなことをずっと言われ続けてきて、ケア会議の中でも、「あなたの考え方はおかしい」。ずっと一方的に私が責められる形でした。でも私には納得がいかなくて、何度も行政の方に相談に行き、「私は仕事をしなくては生活できない。仕事をしている時間以外、全部1人で介護をするのは無理である。子供も母親と一緒に生活がしたい。」という主張が間違っているのかを、最終的には裁判をすることも覚悟の上で行政に審査請求をしました。その甲斐あって何とか今、1日24時間ヘルパーさんを派遣していただける環境ができたのです。これから行政の方々に、もっと重度障害者の介護を理解してほしい事をお願いしつつ、お話させていただければなと思いますので、よろしくお願い致します。

伊藤:ここで千葉県の被害状況を取り上げた映像を見ていただきたいなと思います。千葉は、地盤沈下と液状化現象がすごくて、道路が水浸しになっちゃうとか、とにかく斜めに道路がなってしまう状態が続きました。だから、ヘルパーを派遣するのに車を使うのがすごく難しい状態が続いていたんですけど、なんせ遠方なので電車か車以外方法がなくて。マンホールも全体的に下がってしまい、家が傾いた方も非常に多かったです。旭市でも支援をしていますが、気管切開の手術中に大地震が起こり、津波が来て、ヘルパーたちがみな帰れない状態が続いていました。でもまあ病院にいたので、どうにか旭市の利用者さんは生きられました。私は震災発生時に千葉市内にいましたが、石油コンビナートが爆発しましたので、消防車と救急車だらけで街中が大渋滞でした。発生は午後2時46分ですけれど、夜勤の人たちを派遣できるかどうかが大変でした。
 千葉は石油コンビナートが爆発したこともあり、千葉県人はまずガソリンスタンドに行きました。「あっ、もうこれガソリンがなくなる」と思って行ったんです。とにかくガソリンスタンドが大渋滞で、その頃のニュースは2時間ガソリンスタンドで待ったが、ガス欠のためレッカー車で運ばれたとか、そんな状態でガソリン確保が難しかった。
 3月13日になり、計画停電が発表されました。電車と車での移動が非常に難しい状態でした。3月11日の地震発生時も停電はあったんですが、それほど大きな停電はなく、停電があった地域でもそれほど長時間ではなく、すぐ復旧したんです。ところが計画停電という発表があったのが13日の夜7時か8時くらい、とりあえずこういう停電がありますよっていう風な発表でした。その時情報がかなり錯綜していて、「どうしても電気が必要な人工呼吸器などを付けている人は東京電力に問い合わせをして下さい」と言われて、みないっせいに問い合わせをしたんです。私たちも電話したんですけど、一人だけつながった人がいたものの、「発電機はない」と言われたので、東電に電話したところで何の解決もないってことになりました。
 発表があった当初、自分たちがまず計画停電のどのグループかっていうところで、市町村別ではなく、第1グループか第4グループなのか、どれに自分たちの地区が該当するかがはっきり分からない状態が数週間続きました。ですから、第1グループでも2でも3でも第4グループに該当しても対応できる状態にしておかなきゃいかないということと、夜の7時か8時くらいにこのことが分かり、次の日に早い人は朝6時20分から停電スタートでしたので、その段階で3時間の停電があるっていうことが分かっても、準備が難しい。すごく混乱をしました。第1グループだと、午前10時までやって、その後また午後1時50分から停電が始まりますので、この間にバッテリーに充電をしないといけない。ところが充電にはだいたい7時間くらいかかりますので、充電が間に合わないんじゃないかっていう声がいろんな地区から出ました。ヘルパーの派遣も、計画停電で踏切がある地域では電車が止まる恐れがあるという話があって。最初の3月14日は電車を止めた。でもその後は「電車が止まる恐れがある」としか言わなくなってきた。なかなか派遣自体が難しい困難な状態が起こりました。

 ALSの方にはどんな電源が必要かっていう、一体いくつ電源を使うかなんですけど。この人工呼吸器は内蔵バッテリーの持続時間が4時間ぐらいあるので、まあちょっと安心かな、大丈夫だなと思ったんですが、実際やってみたら長く使っていると内部バッテリーも消耗してしまっていて、本当は4時間持つはずが1時間しかもたなかった。実際使ってないから分からなかったんですが、そういう事態が起こりました。先ほど佐川優子さんの人工呼吸器を見たらLTVだったですが、あれはもうちょっと内部バッテリーの持続時間が短いかなと思って見ていました。内蔵バッテリーだけに頼らず、だめなら外部バッテリーに接続すればいい。別売りで購入するのですが、病院が退院時の指導をきちんとされている場合は、人工呼吸器を装着して退院する時に、予備の別売り外部バッテリー必ず買わせるのです。千葉県にあるALSの専門病院では必ずそうしているのですが、千葉の上方の地域では、そうした退院支援や指導がないので、たん吸引をどうするかの指導もなく退院することになり、外科的な手術だけをして病院を出るっていう感じになっており、外部バッテリーを持ってない人が続発していました。それで実際には、人工呼吸器メーカーの方々が夜に計画停電が発表された後、各家庭を回ったり連絡を取ったりして、バッテリーがない人たちに無料で貸しました。外部バッテリーを持っている人でも実際接続した経験がなかったので、接続のやり方の確認を、みなさん夜の間にしました。まだしも人工呼吸器には外部バッテリーという手段がありますが、たんの吸引器については充電器を使わなければいけない。充電式じゃない吸引器しか持ってない方も1人だけいて、その人は次の日はどうしても吸引器が手に入らないってことになりました。病院も医療機関も、次の日の朝に先生が来ないと、医療機関に入院をしていいかどうか確認がとれないといい、入院を拒否されました。いろんな病院がありながら、吸引器がないお家も入院もできない状態でした。それでとりあえず、ストローがあればなんとかなるかなと、もしも計画停電が始まったらストローで吸引をやろうって話をしていました。
 ポータブル吸引器は、内蔵電池の充電分だけに頼るとすごくパワーを使ってしまいます。なので、ちゃんとした外部バッテリーがないと難しい。カフアシストは内蔵型の充電池がなく、別に外部バッテリーか発電機が使うことはできない状態になりました。
エアマットですけれど、これに1本外部バッテリーのコンセントを使うと、他の電気機器が使えなくなっちゃう。ちょっと大変なんですけども、数時間で続いてシャっと空気が抜けてしまうことはほとんど今出回っているものではないって言われたんですね。もし持っている人は下に布団を敷いて下さいっていう通知が回ってきたんですけども、エアマットはどうしても固くなっちゃうので、2〜3時間の計画停電なら大丈夫でも、腰のあたりがすごく固くなっちゃうんです。で、それは長時間寝てらっしゃる方にはきつい。でも電源をエアマットに取られると他の機器への電気供給がかなり大変なので、計画停電中はチューブをグニュグニュって折り曲げ、ガムテープでグルグル巻きにし、空気が抜けないように皆さん対処されていました。そこに1本コンセントを使わないようにしようと。たぶん業者さんに言ったらそれは駄目って言われるかもしれないですけど、ちょっとエアマットに貴重な電気を使うのはもったいないっていうのがあって。 
 電動ベッドもギャッジアップをするのに電気を使わなきゃいけない。吸引するときにギャッジアップして姿勢を起こす患者さんについては、使う時だけ電源コードを外部バッテリーのコンセントに挿す形をとりました。バッテリーを使い果たした「もしもの時」には蘇生バック(アンビューバッグ)を使うんですけど、ヘルパーは使ったことがない。「これって医療行為じゃないですか」とか言って、やらない事業所もありました。まあ緊急時に備えて平時からやっておかないと危ない話なので、ケア会議ではずいぶんと蘇生バックの使い方をやって、自信があったらやっているような感じでした。
 電源確保のために入院をしていた人は、うちの事業所の利用者のうち10人ほどです。人工呼吸器装着の方もいらっしゃいます。電源確保のためだけに入院するというのは、計画停電が4月の終わりぐらいまで続くという当初の状況からいうと、かなり長期間の入院になってしまう。それはもう嫌だということで、マンションで発電機が使えない方と、計画停電中に水道が止まってしまう方だけ入院しました。後の方はみなさん入院していません。人工呼吸器の外部バッテリーだけでは不安、あとエアコンも外部バッテリーだけではだめで、後は汎用のポータブル電源がすごく使いやすかったので、やっぱり発電機が1台ないと厳しいっていう状態は続きました。前の日に当時まだちょっと寒かったので、千葉市の方に問い合わせをして発電機を、本当は貸出用じゃないんだけれど貸してくれて、一人の患者さんは区役所に交渉して発電機を借りました。
 うちの事業所は汎用ポータブル(バッテリー)がいくつかありましたので、人工呼吸器装着のお宅にポータブルバッテリーを届けました。で、人工呼吸器以外の電源供給に使えるようにしました。他の事業所もうそうなんですが、ガソリンがなく、電車が動かないために、電動自転車を購入したり、1時間圏内は自転車で行くようにして、最重度のお宅と独居の方はヘルパー2人派遣にして皆さんもう泊まり込みじゃないと無理だなっていう感じで、泊まり込みをしばらくやっているような状況でした。
 3月15日時点で「人工呼吸器装着の人はどういうふうに過ごしたらいいですか?」っていう問い合わせを、いろんなところにしたんです。けど当時、その答えをくれる場所はなく、「自分たちの自己責任でまあ頑張って下さい」という感じでした。たぶん在宅難病患者・障害者の名簿があるとすれば保健所だと思うんですけども、保健所から電話がかかってくることはなく、まあ自分たちでできる人はやる、できない人は入院、受け入れてくれなければそれもできないという状態でした。
 日本ALS協会千葉県支部には「充電式の吸引器じゃないですけどどうしたらいいか?」とか「マンションに住んでいるけどどうしたらいいのか?」とか「電源確保のできる病院を探して欲しい」「発電機はどこで買ったらいいの」とか、いろんな質問かあったみたいです。けれど、それをこうだと返せるだけの情報がない状態が続いていたようです。
 テレビでも最初は「東京電力に問い合わせをして下さい」って言ったんですけど、それもだめで。その後「電源については医療機関に問い合わせをして下さい」という風に情報が変わったんですけど、やっぱり医療機関でも「電気のことはちょっと分からない」っていうことで。病院も自家発電機に頼るのに、たくさんの人に来られても対応が難しいということで、なかなか在宅患者を受け入れることが難しい状態にありました。実際にお宅で何を備えておけばいいのか、三島さんご家族にお話していただきたいと思います。
三島みゆき:みなさんこんにちは。プロ野球日本ハムの斎藤佑樹選手で有名になりました千葉県の鎌ヶ谷市から参りました三島みゆきと申します。私は言葉を発することが出来ないので、パソコンを使ってお話しをさせて頂きます。聞き取りづらいところが多々あると思いますがご容赦ください。
 今日は、家族と私がどのようにして計画停電に対応したのか、また、いつ行われるかもしれない計画停電にどうすれば対応していけるかをお話しさせて頂きたいと思います。今回のような、計画停電に対応する為に、事前に準備出来る事として、主人と私は、一泊ぐらいの旅行にいくことを、オススメしたいと思います。患者さんにとっては、単純に気分転換になり、楽しいと云う事も有りますが、何でもそろっている家の中から外に出るには、色々な準備が必要になります。旅行中に必要なものとして色々書いておりますが、家の中のものを、ほとんど持っていく感じになります。
 荷物を詰め込んだり、工程を考えていくと色々な問題が見えてきます。雨の時はどうするか、急に具合が悪くなった時にはどうするか、バッテリーが切れたらどうするかなどです。外出時の一番の問題点は、予備の電源をどうするかです。呼吸器や吸引機のバッテリーは、物にもよりますが大体1時間程度しか持ちません。ですから、それに対してどう対応するかをシミュレーションする事が、今回のような停電時に、慌てずに対応出来る非常によい経験になると思うからです。とは言っても、事前準備の大変さや、最低でも2人の介助者が必要になるなど、色々な問題が発生します。その件に就いては、本日の議題と趣旨が外れておりますので発言は控えますが、行政の方々のご理解をお願いしたいと思います。
少し話が横にそれましたが、我が家が計画停電に、それなりに対応が出来たのは、数多くの外出の経験があったからだと思っております。しかしながら今回の計画停電は、非常に短時間の間に実施が決まり、対応が大変だった訳ですが、震災発生からの流れを、家族と話をしながら整理をしてみました。
 今回の計画停電の原因となる、東日本大震災が3月11日金曜日に発生しました。発生時刻が午後の下校時間と重なっていた為、地震の怖さや自分が動けず避難が出来ない怖さより、娘の身の安全が心配、不安で怖かったのを今でも覚えています。ちなみにこの日は、市役所からの安否確認は、ありませんでした。そして一番頼りの私の夫の勤務先は東京都内なのですが、交通機関が麻痺してしまった為、電車で帰宅することが出来ず、20キロぐらいの道のりを徒歩での帰宅を試みるも、寒さと暗闇と一週間の疲れから、なかなか先に進めずに途中、コンビニで暖を取ったり、カラオケボックスで仮眠するなどして、疲れ切って翌朝帰宅します。私と娘にはとても不安な夜になりました。ニュースを見ていると、千葉市原の石油コンビナートで火災が発生したとの報道があり、帰宅早々で疲れている主人と話をして、ガソリンの確保にスタンドの長蛇の列に並んでもらったり、通常の食料の買い出しなどの備えに走ってもらいました。それだけで 土曜日が終わってしまいました。
 翌日曜日、お昼頃のニュースで、計画停電が検討されていることが報道されていました。主人は 前日までの疲れもあり、遅く起床してきました。計画停電の報道の話をし、引き続きニュースを見ていました。その時はお互い、あまり気にもしていなかったのですが 、 夜のニュースで明日、月曜日から実施されることを知り、慌てて情報収集をしました。
 私の住んでいる鎌ヶ谷市は、第1グループと、第5グループに入っています。グループ毎に実施される時間が異なる為、どの時間帯で実施されるか判断がつかず、ニュースでも詳しくは東京電力に問い合わせて下さいと言うだけで、電話もホームページもパンク状態でハッキリとした情報は得られず、主人がいつ停電になってもいいようにと準備を始めました。
 私が生活している部屋は、たくさんの医療器具に囲まれており、殆どの物が電気で動いています。主なものは、呼吸器、吸引機、酸素吸入器、電動ベッド、エアマット、カフアシスト、ネブライザー、「伝の心」という今もここで使っているパソコンと、キーボード代わりのスイッチなどです。これらの物をすべてカバーする事は出来ないので、優先順位をつけて準備を始めます。
 まず一番重要な予備電源の用意です。ポータブル電源は、アウトドアで利用されている方が多いと思いますが、どこででも電化製品が使えるので、非常に便利です。次に車用のインバーターと延長コードです。車のシガーライターに差し込むと、ポータブル電源と同じで、電化製品が使えます。私の部屋は駐車場の隣なので、5メートルぐらいの延長コードを使えば、部屋の中に入れられます。この時は、主人が車に詳しい事、昨日のうちに長蛇の列に並んでガソリンの給油をしておいてくれて、本当によかったと思いました。次は、主人作のポータブル電源です。車用のバッテリーと先程と同じように、インバーターを直結して作りました。バッテリーに取手が付いているので、持ち運びが出来て便利だったそうです。
 その他に用意したものでは、懐中電灯で吸引の時、両手が使えるように頭につけられるタイプの物です。電池の購入は単1、単3、単4、3種類を購入しました。手動式吸引機、 アンビューバックの用意、床擦れ防止マット、ラジオ、バッテリーやポータブル電源は、停電のない時に繰り返し充電して、対応することに決めてエアマットは業者に問いあわせし、極力空気が抜けないように工夫をしておき、他のバッテリーに余裕があれば、電源を入れて使用することにしました。また、余裕のない時は、床擦れ防止マットにて対応することにしました。
 意思伝達装置 「伝の心」のバッテリーが切れるまで約30分使い、その後は 電源のいらない呼び出しスイッチに切り替えてもらい、文字盤にて対応してもらうようにしました。このスイッチも私の病気の場合は、電源のいらないタイプの物で使える物が少ないので、とても苦労します。停電実施の発表が夜だった事もあり、全ての用意が終わると、深夜になっていました。翌日から主人は仕事なので、鉄道の状況を確認すると、運休または大幅な間引き運転の予定で、緊急時に帰宅出来なくては困るので、当面自転車で通勤する事にしてもらい、 なんとか乗り切りました。
 私は、24時間をヘルパーさんに支えて頂いているので、翌日から通常通りにヘルパーさんにも来てもらえるのか、と不安になりました。取り敢えずこれだけ用意すれば 、1回2時間から4時間程度の停電ならば、どうにか乗り切れると思います。
 最後になりますが、重度障害者はこれだけの用意が必要になる訳です。全ての患者さんのご家庭で、同じ用意が出来る訳ではありません。時間的な余裕も少なすぎたと思います。緊急で仕方のないことだとは思いますが、計画停電ということなのですから、もう少し計画的な実施と、在宅療養の重度障害者への配慮が欲しかったと思います。一部の地域では重度障害者が何人いて、どこに住んでいるかを行政が把握出来ていない地域があったと聞きました。私の所に市役所から電話があったのも、1週間もたっていました。今後の為にも、行政と各患者家庭との緊急マニュアルが必要だと思います。もう少し、きちんと重度障害者の情報把握と、停電弱者への配慮をお願いしたいと思います。以上です。ご静聴ありがとうございました。

質疑応答

立岩:本日、ファシリテーターっていうのをさせていただきます立岩と申します。後半にも福島の話、それから京都の話が出ると思います。できれば千葉のことで聞きたいことがあれば、そちらを優先していいのかなと思うんですけれども。いかがでしょうか。

フロア:車のバッテリーの屋内使用は危険だ。また新潟地震のときも患者情報の開示で大変困られ、人工呼吸器を使っておられる患者さんたちのお宅を一軒一軒回って、情報をオープンにしていいか確認して全部に配布したらしい。いま京都でもどこでも情報保護法でシャットアウトされるので、その辺を考えないといけない。先日京都市の担当者と話をしたが、担当者が3年ごとに変わるため人工呼吸器利用者の事情をご存知ない。もうひとつ介護の給付時間には上限がない。和歌山で裁判があるが、給付上限はないということになっております。

立岩:電源確保を室内でする場合の危険はメーリングリストでも指摘があり、みんな錯綜しながら安全を求めてやってきたというところだと思います。それから、どこに誰がいるのかということをどうやって把握するのか、誰が把握しておくのか、そしてどういうふうなつながりを作っておくのか、ということが後半にも関係する大切なポイントだと思います。それからヘルパーの給付時間数の話ですけれども、最初に伊藤さんおっしゃったけれども、千葉っていうのはもともと制度的にかなり厳しい状況で、かなり行政交渉しながらそれでも何とかここまできたぞ、でもまだまだ、という感じなんだと思います。補足しておくと、今、「りべるたす」のような形でヘルパー派遣をしている事業所って千葉にいくつあります?

伊藤:2つです。

立岩:2つなんですよね。千葉県って無茶苦茶広い県なわけですよ。ですのに、そういう形の派遣をしているところが2カ所しかないと。なおかつそうすると自動車とかで移動するしか普通はないわけですよね。伊藤さんこないだ1カ月で何キロ走ったって言ったっけ。

伊藤:4千キロ。

立岩:1カ月4千キロ走らないと間に合わないという状況です。なおかつ今回道路が陥没し、ああいう状態になってきた場合に、結局千葉で医療的ケアに対応できる事業所が2つというわけなのでは到底、間に合わない。もっと小さい範囲の中でサービスを提供する、というのが一つの形なのかなと思います。

佐藤:京都で事業所「ゆに」を立ち上げている筋ジストロフィ患者の佐藤と申します。伊藤さんに伺いたいのですが、「ポータブル電源」とはどんなものなのでしょう?

伊藤:70分間くらい充電すればAC電源が取れるようになっている、板型になっている電源があるんです。発電機の話がさっき出ていましたけれども、私たちも情報が分からなくて、幾つかのお宅で自宅の中で発電機を使い一酸化炭素中毒になった事例があって。確かに家の中で使ってはいけない物なのでしょうけれども、そんなことも分からず、みんなとりあえずバタバタ借りて家の中でやってみたら、すごい煙と小型バイクが走っているみたいな状況に、まずびっくりしました。介護ベッドのギャッジアップをしてたん吸引するためだけに発電機を使うのはもったいない。ポータブル電源で検索すれば購入できます。当時はなかなか買えない状況でしたけれども。値段的には2万から4万円くらいです。

立岩:ありがとうございました。具体的な技術的な安全性を問われるところですから、それに対する正確な情報というのは当然必要なわけで、そこのところをかなりいち早くいろんな人がいろんな対応をしてくれたわけですけれども、それをもっと隅々にまでどうやって回していくかっていうことは、今日ずっと問われる話だと思います。

フロア: 東京で24年ほど在宅人工呼吸の方の支援をやってきました。病気の告知、病院が退院させる時の退院指導について大きな責任を負わされるべき。家族の方に、ご主人に仕事を辞める覚悟で、仕事を辞めて私の人生あるのかと、奥さんの私の希望というのも無視して、ただ生きとったらええというような説明の仕方が間違っています。社会生活を前提としない退院指導、緊急時の指導もないのは問題と思います。退院を妨げるのではなく、退院してその先にどんな希望を抱くことができるのか、ということを具体的に叶える指導がなされるべき。それは千葉でもどこでも同じだと思います。退院させる医療機関、それから病名告知と退院指導の責任は大きいと思います。付け加えさせてください。

立岩:すくなくとも私は全く同じように思っております。今の件に関して千葉の状況ですね、市町村によっても違いますけれどお話ください。

三島正剛:退院指導ですけれども、我が家の例をとりますと、まず一番気管切開をした後に困るのが、たん吸引の行為だと思います。私も普通のサラリーマンですので、吸引なんか全く見たこともないような状況で、医療機関の方はそれをご存知のはずなんですけれども、吸引の指導を受けたのはたったの一回だけでした。時間的にもだいたい5分くらい、「10センチぐらいしかカニューレを入れてはいけませんよ」という説明しかなかったです。その後、家内は苦痛に耐えていたと思うんですけど、「病院の中で非常に要望が多いです」とか、「あまりこちらの言うことを聞いてくれないから、早く出てってくれないか」と、半分追い出されるような感じで、病院を退院しました。それで今でも具合が悪いとき、入院する病院が決まっていない状況で、在宅の往診をしていただいている先生にお願いして病院を探していただいて、入院するというような現状になっています。

伊藤:もともと緊急時の前から、医療機関が決まっていなくって。こういう緊急時にじゃあどこに入院するのかっていう話になりますが、災害の前に、もともと緊急入院先が決まっていないことがまず問題です。また吸引については、三島さん宅では退院したその日夜から私たちが支援に入らなければならないですが、私たちヘルパーに対しても病院からの指導はなかったので、「どうやりましょう?」みたいな感じで。たまたま往診の先生がペットボトルを使って教えてくださったので、それで何とかしのいだ感じです。退院指導というものが全くなされず退院が起こる。千葉の地域性もあるとは思いますが。医療的な処置をすることが病院の仕事だという認識でいらして、気管切開して2日目で退院という方もいらっしゃった。介護体制を整えるとか退院支援をするとか、病院と話をしなければならないとこだと思うけれども、その話がないまま、在宅へと出てきちゃうっていう現状で、まだまだ千葉ではこうした状況が珍しくはないです。
立岩:一方では5分で指導と称してそのまま地域へ帰される、一方では何十時間も研修しないとヘルパーに医療的ケア(吸引)をさせないっていう非常に矛盾した計画というか、計画になっていない制度を国が進めているわけですよね。家族なら医療的な研修なしでもオッケーで、一方でヘルパーは何十時間もやらないとダメだみたいな。なんなの? っていうことでもある。

フロア:千葉は広いところで2つくらいしか人工呼吸器を使って自立生活される方を支援する事業所がないという問題を言われましたけれど、その問題をどこに一番訴えたいのか。行政に「おかしいやん、変われ」と言いたいのか、ヘルパー事務所にもっと医療的ケアをやるようにと働きかけたいのか。あるいはもっと当事者の人に声を上げないといけないと言いたいのか。そこをお聞きしたい。

伊藤:行政も理解してほしいけれども、事業所もそうですし、やはり市民の考え方が一番なのかなって思います。三島さんをみてもしっかり育児もされていますし、在宅で十分暮らせる方だと思うんですが、在宅で暮らすということに私たち市民の理解がまだない。それが一番の原因で、ちょっと千葉でも田舎の方に行きますと、鎌ヶ谷市はそれほど田舎じゃないですけれども「家族の責任でしょ」って具合にみんなまとまってしまっていて。そういうところを私も含めて、多くの人たちの考え方を変えるところが一番なのかなって気がします。

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