マイノリティ研究会

本プロジェクトは、マイノリティ研究を諸力のせめぎ合いの場として捉える視座から、その再考を行なうことを目的とする。すなわち、マイノリティ研究とは、「マイノリティ」と自称する/他称される人々、「マイノリティ」をめぐる政策、そして「マイノリティ」の実践を言語化しようとする学あるいは知などの諸力の相克の過程、そしてその結果として紡ぎだされるものである。ときとして、それは妥協であり、予定調和でさえあるかもしれない(本研究会の過去の成果の1つである天田・村上・山本[2012]を参照)。
1990年代以降、マイノリティ研究は主に社会学の領域で多くの蓄積がなされてきた(たとえば井上[1996]、栗原[1996]、 三浦[2006]など)。では、従来のマイノリティ研究は、諸力の相克の過程に自覚的かつ内在的に問えているだろうか。研究者自身がマイノリティ研究、そして「マイノリティ」そのものを形成する力の一つであることをどう捉え、記述内容や理論、方法論にフィードバックできるのか。マイノリティ研究が妥協や予定調和の産物でしかないとしたら、それをどう考えるのか。先行研究は、これらの問いを深めることなく見過ごし、その一方で、数多ある差異を「発見」し、カテゴリー化し、言葉を量産してきた。あるいは、自己言及的な語りに内閉する研究が多く、諸力の相克の過程を突き放しつつ記述する研究が求められている。このような現状のなかで、本プロジェクトの意義は、先行研究を再考し、マイノリティ研究の「ごまかし」を明確化しながら、据え置かれてきた問いに向き合い、新たな理論と方法論を模索する点にある。

生存学研究センターは、「障老病異」を基軸とし、4つの学問的課題群(①生存の現代史、②生存のエスノグラフィー、③生存をめぐる制度・政策、④生存をめぐる科学・技術)を交差させつつ研究を展開している。本プロジェクトは、「異」――すなわち、階層、階級、性、民族・エスニシティ、病、障害などの具体的諸問題――における、「当事者」と制度・政策、それを下支えする学・知のせめぎあい(上記③)、その実態を記述する方法論の批判的構築(上記②)、そして、「マイノリティ」という視座からの体制の歴史への批判的介入(上記①)という効果をもたらす。

プロジェクト名 マイノリティ研究会
プロジェクト代表者 小泉義之
年度 2013