現代社会エスノグラフィ研究会

2013年度より、本研究では、「生存学」において、これまで取り組まれてきた「障、老、病、異」に深くかかわる、医療現場、当事者集団、社会運動体、国境を越えたNGO活動などを対象とする事例研究への成果を、さらに深化させるため、現在進行形の時間軸で生きる人々の「生の技法」を捉えることを可能とする民族誌学的方法論の検討を継続している。これまで、「生存学」研究センターでは、文献研究、史資料分析、社会学的分析の方法論が用いられ、いわゆる過去から現在へという時間軸を叙述する研究が蓄積されてきた。 

従来、「障、老、病、異」にかかわる社会学、文化人類学の研究は、それぞれの学問分野においては中心的議題ではなかった。しかし、「生存学」はこれらの課題を中心的課題に押し上げることに貢献した。さらに、次世代の当該分野研究者が集まる拠点づくりを実現してきた。現在、その活動は、他の大学機関にも影響を及ぼしつつある。

本研究の目的は、「障、老、病、異」に関連する他の機関での研究潮流をも意識し、「生存学」研究センターにおける歴史的叙述による成果に加える試みを行いたい。

具体的には、文化人類学におけるフィールド調査及び社会学の質的調査の方法を導入し、ある特定の集団や、社会関係、帰属意識、自己認識などがいかにして生成し、変容しているのかという点を「生の技法」という視角から明らかにし、記述する方法論を構築することである。

長年、文化人類学及び社会学では、研究者の立ち位置やその役割を被調査者との関わりから対象化し、方法論にまで発展させることが議論されてきた。しかし、それらの議論は、従来の社会学における質的・量的調査法、文化人類学におけるフィールド調査法において検討の余地を残した大きな課題であり続けている。

本プロジェクトでは、この様な課題を克服するため、人類学者と社会学者が連携することで、新たな民族誌学的記述法を個別の事例を交えながら提示する予定である。生存学研究センターに対しては、「生の技法」を捉えることを可能とする民族誌学的方法論の確立に貢献できるだろう。さらに今年度は、次世代の若手研究者に「生の技法」の民族誌学的方法論を確立するための議論に参画してもらう機会を設ける予定である。

プロジェクト名 現代社会エスノグラフィ研究会
プロジェクト代表者 小川さやか
年度 2015