出生をめぐる倫理研究会

2015年度の本研究会の目的は、現代の生殖をめぐる倫理的問題を歴史的文脈で捉えた上で、今日の生殖関連の諸言説と立法動向を批判的に検討することである。2015年度は本研究会のこれまでの研究活動の一つの集大成と新たな試みとして、研究会メンバー4名の近刊著書の合同合評会シンポジウム「日本とフランスにおける生殖医療と生命倫理」、生命倫理学会年次大会におけるワークショップ「生殖と医療をめぐる生命倫理と近現代史」を実施する。また、国内外で活躍する医史学、科学史の研究者2名(保明綾氏、花岡龍毅氏)を招いた2つの公開研究会を企画し、生命倫理学おける日本の歴史研究の動向と可能性を議論する。本研究会は、現在国内外で学際的研究が展開している生命倫理学において、歴史研究のアプローチがどのように意義をもちうるのかを示すことを2015年度の最終的な目標とし、それをテーマにした報告書(『生存学研究センター報告』)を年度末に刊行する。

本研究会は2008年に設立されて以降、出生をめぐる倫理をテーマに、歴史学、社会学、哲学、法学など様々なアプローチから考察を深めてきた。研究会メンバーはこれらの学際的研究に学びながら、とくに近現代史研究の手法を用いて、生殖医療と生命倫理に関わる個人研究を試みてきた。その研究成果の蓄積は、本研究会の特色を形成すると同時に、生存学研究センターが現在の日本国内における生殖の近現代史の研究拠点の一つとなりつつあることを示している。生殖と医療の倫理的問題に取り組む本研究会の課題の射程は、生存学研究センターの基軸および課題群を複数とらえているだけでなく、それらの多岐かつ密接な連関を示すものである。一つの医療・技術が人々の生に様々な影響を及ぼしつつ、そうした医療・技術の集合がいかに社会・制度をつくり上げるのか、その歴史的経緯を示すことで、本研究会は現代の生殖において「生きて在る」という実践の可能性を探る。

プロジェクト名 出生をめぐる倫理研究会
プロジェクト代表者 松原洋子
年度 2015