生存学と文学

文学作品に描かれた「ままならぬ身体」を再考する。身体を束縛する社会的拘束力と、それに対抗し逸脱する身体の様相を、文学作品の読解を通じて検討することがその主な目的である。本研究会は2010年の発足以来、カフカ、シュルツ、安部公房、寺山修司、多和田葉子といった作家の作品を中心に取り上げてきたが、本年度からは新たな試みとしてSF文学にも関心のある新メンバーを数名加え、既成のジャンルを横断する形で文学を捉え直し、これまでの生存学と文学を結びつける考察にさらなる深化を目指す。

2013年9月に、日本近現代文学と障害者文化論を研究されている荒井裕樹氏をお招きして、「障害学研究会」とのコラボ企画「隔離される生命/表現する身体――障害当事者の共同体と文学をめぐって」を開催することができたが、今年度も可能であれば、生存学研究センターを拠点に展開する他の研究プロジェクトのメンバーとも連携した合同企画の開催を目指している。

また本研究会は、障害、病、老い、異なる身体を抱えた人々の経験を/から学ぶという生存学研究センターの掲げる研究課題に対して文学研究の側から貢献することを目的に立ち上げられたものであるが、そのコンセプトは、いわゆる「純文学」だけでなくSF文学にも身近なものである。例えば(アンチ)ユートピア文学には障害や病などの生存をめぐる問題を中心的に描いた作品が多く、「異なる身体」はSFのもっとも得意とするテーマのひとつである。あくまで文学研究に軸足を置きながらも、その考察対象にSF文学も含むことで、生存学研究センターの新たな視野の開拓と充実化に向けて、本研究会はさらなる貢献が見込まれるはずである。

プロジェクト名 生存学と文学
プロジェクト代表者 西 成彦
年度 2014