人工呼吸器を装着した私の挑戦――障害学国際セミナー2017に参加して

掲載日: 2017-12-01 English: for English

ポスターの前2017年10月24日から26日にかけて韓国の順天郷大学で開催された障害学国際セミナー2017に参加しました。日本、韓国、中国、台湾の研究者たちが集まってポストモダンというテーマを主軸にしながら、障害をどのように理解していくか、障害をめぐる問題がどのように立ち現れるのか、ということが議論されました。

言語も文化も風習も置かれている状況も違う中で、障害や病をどう理解し考えていくかは確かに重要なテーマです。

実際にALS(筋萎縮性側索硬化症)という難病を持ち人工呼吸器を装着して人の手を借りながら生活している私にとっては、「障害とは何か」ということを追求していくと同時に、私たち重度の障害を持った人間がどうやって生きていくのか、という「生きる手立て」を考えていくことも必要です。

私は、60歳のときにALSを発症しました。ALSとは、未だに原因も治療法も解明されていない進行性の難病です。その症状は、身体が動かなくなり、呼吸をすることさえも難しくなります。生きるためには人工呼吸器が必要になります。ALSは、全身の筋肉を動かせなくなり、寝たきりになる難病です。国内では、人工呼吸器を使用する患者は、3割以下と言われています。つまり、呼吸をするための筋肉が衰えてきた段階で、7割の患者が、呼吸器の装着をせずに死を選んでいる(選択させられている)ということです。多くの人たちは人工呼吸器の装着をためらいます。私もそうでした。迷いに迷い、悩みに悩んだ末に、人工呼吸器を着けました。当初は、車椅子への移乗もできず天井を見てばかりの生活で、人工呼吸器を着けたことを後悔しました。やりたいこともできずに、病気だからと様々なことを諦めていく生活でした。もう海外にも行けないと思っていました。

しかし、日本自立生活センター(JCIL)の小泉浩子さんたちと出会って障害者運動に触れて「自立生活」という考えを学び、障害があっても自分と環境次第でできることが無限大に広がっていることを知りました。それからは、多くの人が困難だと思うような事にも挑戦し、自分で道を切り開いてきました。今回のセミナー参加もその一つです。なぜなら、セミナーへの参加はもちろんのこと、海外へ行くのも、飛行機に乗るのも、人工呼吸器を装着してから初めてのことだったからです。

エコノミー席6席使ったストレッチャー席。そこには大きな壁がありました。まず、私が乗れる飛行機の座席が限られていることを知って唖然としました。私は、座位を保つことができず、身体を横にした状態でなければ肺が破裂してしまう危険性があります。そのため、フルフラットが可能なビジネス席かストレッチャー席を用意してもらう必要があり、それだけで費用がかかってしまいます。今回の私の場合、ストレッチャーの取り付けには6席(エコノミークラス)が必要となり、その6席分の支払いが求められました。しかも割引料金ではなく、正規料金だったため、私の参加には他の参加者と比べてほぼ10倍の航空券代がかかっています。さらに、ストレッチャー席は機体の後ろに設置されており、そこまでの移動手段がありませんでした。そのため、私の身体は床に敷かれたビニールシートの上に置かれ、それを3人がかりで席まで引きずっての移動でした。狭い機内の移動では、あちこちに傷もできました。このことだけでも、社会が私のような重度の障害を持つ人間が飛行機に乗ることを当たり前のこととして認めていないことがわかります。こうしたことは、日々の生活の中にちりばめられています。だからこそ、今後のセミナーでは各国の介護の制度や実際の具体的な生活場面に関わることについての報告や議論が必要だと思います。

私のような人工呼吸器を装着した重度の障害をもつ者は、常に安楽死や尊厳死と隣り合わせで、社会のあり様によって存在や生命の価値が左右されてしまう環境に置かれています。だからこそ、私は私たちのリアリティを伝えるために、セミナーに参加しました。そして、私の参加を必要としてくれる人がいたから実現でき、私は「生きている」ことを実感しました。セミナーは、私たちが一緒に生きられる道を作れる場です。これからも自身のリアリティと挑戦を通して、生きられる道を開拓したいと思います。

増田英明

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