開催報告(2015年5月〜7月開催)ボリス・シリュルニク氏招聘プレ企画

掲載日: 2015-08-03 English: for English

2015年11月2日(月)と3日(火)に、フランスの精神科医であり、ご自身がユダヤ人でホロコーストの生き残りでもあるボリス・シリュルニク氏を迎えて、立命館大学生存学研究センター主催のシンポジウム企画「トラウマからレジリエンスへ(仮)」を開催予定です。シンポジウムに先立ちまして、2015年5月より7月にかけまして、本学先端総合学術研究科教授の西成彦先生のご指導の下、全3回のプレ企画を開催しました。

2015年5月30日(土)に開催されたプレ企画「レジリエンス概念の応用可能性について」には、シリュルニク氏の著書『憎むのでもなく、許すのでもなく』、『心のレジリエンス』(吉田書店)の翻訳者である林昌宏さんを講師として、本学衣笠総合研究機構教授のやまだようこ先生をコメンテーターとしてお招きしました。シリュルニクさんご自身とも親交を結んでこられた林さんは、翻訳権を得られてから日本での出版までの困難な道のりについて体験談を語ってくださいました。レジリエンスを「へこたれない精神」という見事な訳で表現された林さんが語られた何度も出版社に断られながらも書籍化を実現したストーリーは、まさにレジリエンスを想起させる生き生きとしたものでした。

6月28日(日)に開催されたプレ企画「トラウマと歓待」には、北海道大学大学院文学研究科准教授の小田博志先生を講師として、本学応用人間科学研究科教授の村本邦子先生をコメンテーターとしてお招きしました。小田先生は、ホロコースト後、自らの経験を語る人びとの事例を肉声と共に紹介してくださいました。その事例から、語る他者を歓待する「場」が提供されることで、トラウマの「居場所」が成立し、トラウマの変容が生じることについて論じられました。若い世代に語ることでその出来事が「二度と起こらない」という希望を生み、語り手が過去から解放されることにもつながります。こうして歓待は、ホロコーストというトラウマ的出来事によって分断され非人間化された関係性をつなぎ直すのです。

7月5日(日)に開催されたプレ企画「雨と土の物語」には、滋賀県立大学人間文化学部教授の松嶋秀明先生を講師として、やまだようこ先生をコメンテーターとしてお招きしました。「雨降って地固まる」という大きな逆境の後に良好な適応を達成する一連の過程のなかにレジリエンスを見出された松嶋先生は、レジリエンス概念がいかに臨床心理学者としてご自身が関わる非行少年のケースに応用できるか、事例紹介と共に考察くださいました。レジリエンスは個人に留まらない集合的な変化であり、レジリエンスが生じるためには、一つの方法に固執するのではなく、周りが柔軟に非行少年と関わっていくことが重要であると論じられました。

全ての企画において、講師の方にご講演いただいた後、コメンテーターの先生方とのディスカッションを行い、参加者が自身の研究テーマを踏まえた上で講師の方々に質問・意見交換をしました。3回のプレ企画を通じて、参加者一同、シリュルニク氏をお招きするシンポジウム企画に向けて、自身がいかに関わっていくかの構想を膨らませることができました。悲惨でトラウマ的な出来事を経験した上でも生きていく強さを見せる人びとのなかに生じているだろう「レジリエンス」そのものについて考察し、その概念の可能性が開かれていく過程を経験したいと感じました。

(日本学術振興会特別研究員PD/生存学研究センター客員研究員、小西真理子さんによる開催報告を掲載)

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