韓国におけるデジタルゲームの教育的活用

掲載日: 2015-08-01 English: for English

1. 「グッドゲームショーコリア」:良いゲーム、シリアスゲームの活用及び普及を目指し、韓国政府が行っているゲームショー。ゲーム振興のための努力の一例。*2015年5月29日(韓国)撮影

デジタルゲームに関する論争では、教育におけるその活用のありかたが、現在に至るまで中心的な課題として議論されてきました。

韓国では、2010年、若い夫婦がゲームに熱中して子供を放置し、死亡させた事件が社会的に衝撃を与え、それをきっかけにデジタルゲームに対する否定的な認識が急速に広がりました。2011年に、韓国政府は「シンデレラ法」としてよく知られる「オンラインゲームシャットダウン」を制定し、さらに、デジタルゲームをアルコール、麻薬、ギャンブルのような中毒性のある媒体として規制の対象とする法律を制定しようとする動きが続いています。

このような状況のなか、私は韓国の教育におけるデジタルゲームの活用の可能性について研究を進めています。これまで、韓国の教育におけるデジタルゲームの活用例は少なく、デジタルゲームを教育的に活用する可能性を検討する研究もわずかでした。しかし、過去の状況とは異なり、現在、韓国政府はデジタルゲームがもつ教育的活用の可能性に注目し、いわゆる「良い」(착한)ゲームの開発や普及をサポートすることを表明しています。そこで最も注目されているのが、シリアスゲームです。「シリアスゲーム」という用語は、単に面白さやエンタテインメント性だけでなく、特定の目的――例えば教育、訓練、トレーニングなど――のもとにデザインされたゲームを意味します。最近の研究では、これが教育、軍隊、医療、福祉などの様々な分野で活用されていることが明らかになっています。

こうした背景をふまえて、私は2つの理由からシリアスゲームに注目するに到りました。第一に、シリアスゲームの中には専門性が含まれています。ゲームでありながら、一般のデジタルゲームとは異なり、プレイヤーに明確な情報やフィードバックを提供できます。第二に、シリアスゲームは、相互作用(interaction)、注意力(attention)、動機づけ(motivation)といった教育に影響を与える要因と、ゲームならではの面白さという2つの特徴をあわせもち、教育の現場において広く応用できるので、その活用の効果が大きいのです。さらにいえば、ゲーム産業の観点から見ても、ゲーム産業が教育的ツールとして積極的にシリアスゲームの開発・販売を行うことで、新たな経済効果が期待されています。

2. 「グッドゲームショーコリア」2015年5月29日(韓国)撮影

ただ、一方で、韓国のシリアスゲームを一つの定義でまとめることは難しいのが現状です。なぜなら、「シリアス」の定義が不明確で、他の類似の概念である「Edu-Game」("教育"(education)と"娯楽"(entertainment)を結合したエデュテインメントゲームのこと)や「教育コンテンツ」「Gameification」(ゲームが持っている特性をゲーム以外の領域に適用し、没入させ、より効果的な問題の解決を目指すこと)などの概念との区別が難しく、混乱して用いられています。また、教育におけるデジタルゲームの活用に関する研究のほとんどが、ADHD、自閉症スペクトラムを含む発達障がいをもった子どもたちの支援教育や言語習得を中心に行われており、対象の限定性という課題があります。

とはいえ、IT技術が発展すればするほど、教育におけるデジタルゲームの活用性は高まり、より広範な展開が見られるようになるでしょう。シリアスゲームは、新しい世代、つまり「デジタルネイティブ」のための教育的ツールとして価値をもち、効果的かつ自然な媒体になっていくだろうと思われます。

韓国においてデジタルゲームは、社会問題として取り上げられ、否定的認識を生んできましたが、教育分野におけるシリアスゲームや「良い」(착한)デジタルゲームに着目して、より広く効果的かつ普遍的に活用されるようになることを目指して、研究をしていきたいと考えています。

シン ジュヒョン

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この成果は、生存学研究センター2014年度若手研究者研究力強化型「国際的研究活動」研究費の助成を受けたものです。

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