世界との連携、老いの不安――血友病患者会が直面する課題

掲載日: 2013-08-01 English: for English

*これまで人文社会科学の領域では、血友病はHIV感染や「薬害エイズ」という枠組みで世界的に多く論じられてきました。けれども、1970年代以前の血友病の歴史的背景はほとんど取り上げられず、忘却されています。そこで、私は戦後日本の血友病の歴史を軸に、血友病者の身体、血友病の先端医療、社会制度の変化の接点で起こってきた課題について研究しています。

一方で、私は研究対象である血友病患者会の支援活動も行なっています。血友病患者会はHIV感染問題の影響で、その全国組織が長期間休止状態にありました。2008年3月に20の各地域の血友病患者会を基礎に、ヘモフィリア友の会全国ネットワーク(以下、全国ネットワーク)が結成されました。

全国ネットワークを組織した各地域の血友病患者会の有志は勢いづいて、全国ヘモフィリアフォーラム実行委員会を組織し、2010年、2011年に全国ヘモフィリアフォーラムを開催しました。これらは4月17日の世界ヘモフィリアデーに合わせて開催されました。2010年のフォーラムでは、実行委員会からの依頼で、私は『日本の血友病者たち――1960年代から現在まで』というスライドの原案作成に協力しました。

2012年12月、全国ネットワークは、一般社団法人ヘモフィリア友の会全国ネットワークに移行しました。新法人の主催のもと、2013年4月13日(土)および14日(日)、東京の文京シビックホールで「全国ヘモフィリアフォーラム2013――Your Life! 今を見つめ、未来を語る」が開催されました。血友病者を取り巻く様々な課題が議論されましたが、ここでは特に国際的な連携と老いの問題を取り上げます。

このフォーラムは13日午後、世界血友病連盟(World Federation of Hemophilia、以下、WFH)のアリソン・ストリート氏(元医療担当副会長)の「Treatment for All:すべての血友病患者に治療を――途上国の状況」という基調講演から始まりました。ストリート氏は、世界の血友病者の70%が診断を受けられず、75%が満足な治療を受けていない現実とWFHの施策を話されました。

*続いて、パネルディスカッション「世界における日本の役割――日本の血友病医療は先進的か?」が行なわれました。日本は、これまで血友病治療における製剤の安全性の確保や安定供給を実現してきました。しかし、WFHの結成当初から加盟国のひとつであったにもかかわらず、とりわけ近年は積極的に関与できていませんでした。そこで、全国ネットワークは、国産凝固因子製剤のWFHへの寄付を日本赤十字社に要望しました。フォーラム前日、全国ネットワークは、来日したWFHのストリート氏、ロバート・レオン氏(アジア西太平洋地域マネージャー)とともに厚生労働省を訪問し、血友病の世界的状況、WFHの製剤寄付の方針などを説明しました。司会の佐野竜介氏(全国ネットワーク理事長)が製剤寄付の要望活動を報告、パネラーのストリート氏、加藤誠実氏(厚生労働省血液対策課長)からもコメントをいただきました。

14日午前は、5つの分科会に分かれて話し合いました。特筆すべき分科会として「女性・保因者」「長期的な生活設計」「類縁疾患」分科会が挙げられます。なかでも、「長期的な生活設計」分科会は、適切な血友病医療によって多くの血友病者が老いる時代を迎えて、必要とされた分科会です。中年以上の血友病者の一部は、長い間、同じ関節に出血を繰り返して可動域が狭くなる血友病性関節症に悩まされてきました。人によっては人工関節置換手術を受けて、既に術後10年から20年以上が経過しています。人工関節の寿命は15年程度なので、再び手術を行なう血友病者もいます。最近では、歩行困難から電動カートで移動する血友病者の姿も見られるようになりました。ほかにも、年相応にいわゆる成人病(生活習慣病)の症状の血友病者も増えています。また、これから重大になる血友病者自らの老いや親の介護にかかわる将来の不安が話し合われました。

今後も、私は血友病患者会が抱える上記のような具体的な諸問題に理論的かつ実践的に応えることで、人文社会科学に新たな発展を生み出せればと考えています。

北村健太郎

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