開催報告(2015年7月25日開催)生存をめぐる制度・政策連続セミナー「障害/社会」第6回「開発と障害当事者への支援」

掲載日: 2015年08月18日

立命館大学生存学研究センターは、2015年7月25日(土)に立命館大学朱雀キャンパスにて生存をめぐる制度・政策連続セミナー「障害/社会」第6回「開発と障害当事者への支援」を開催しました。

本研究センター客員教授であり、特定非営利活動法人アフリカ日本協議会(AJF)の事務局長である斉藤龍一郎氏より、アフリカにおける治療・支援体制の課題とその解決に向けた取り組みについて講演をいただきました。

はじめに、アフリカでの開発援助と病者・障害者支援をめぐる専門家と当事者とのずれについて問題提起がありました。また、アフリカでの石油や天然資源の開発、人口増にともなう経済的な開発によって「開発」と「援助」の分離が進んでいるなかですすめられる医療・障害者支援において、援助機関スタッフや医療従事者といった「専門家」と障害をもつ「当事者」との間での意識のずれや衝突が問題となっています。こうした状況を変えるモデルとして、日本においてヒューマンケア協会など障害者運動の成果をふまえておこなわれているJICA(国際協力機構)やDPI(障害者インターナショナル)を通じた現地の障害当事者へのリーダー研修といった活動が紹介されました。

次に、スーダン障害者教育支援の会(CAPEDS)の活動によって見えてきた課題についてお話しいただきました。たとえば、支援体制が整わない現地では家族に隠されて姿がみえなくなってしまうこともある障害者支援において、障害当事者や家族との継続的なつながりを形成するアクセス方法やかかわり方の工夫について述べられていました。最後に、これまでの具体的な取り組みから見いだされた課題と成果をモデル化し、今後の支援につなげていくことの重要性を強調されました。

講演後におこなわれた質疑応答では、アフリカの政治・社会的な不安定さへの対応、支援へのアクセス困難、知的障害者支援への取り組み状況などについて質問があり、まさにいま現在おこなわれている国際的な支援体制構築の課題と方向性について議論がなされました。

このたびのセミナーは猛暑のなかでの開催となりましたが、アフリカの障害者支援について貴重なお話をうかがえる機会になりました。この場を借りて、参加者と開催にご尽力いただいたみなさまに御礼申し上げます。

(立命館大学衣笠総合研究機構准教授 渡辺克典先生による開催報告を掲載)