開催報告 生存をめぐる制度・政策 連続セミナー「障害/社会」第3回「障害者差別解消法の仕組み」

掲載日: 2014年07月29日

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 立命館大学生存学研究センターは、7月18日(金)、朱雀キャンパス多目的室にて 生存をめぐる制度・政策 連続セミナー「障害/社会」第3回 を開催し、学生や一般市民など約25名が参加した。

 今回のセミナーは2部構成で、第1部はDPI日本会議の崔栄繁氏を講師に招き、「障害者差別解消法のしくみ」と題した講演が行われた。崔氏は、まず差別解消法の前提として、障害者権利条約と障害者基本法について、条約が必要とされた世界における障害者の状況、条約において打ち立てられた「障害の社会モデル」という枠組み、さらに同条約第2条において定義された「障害にもとづく差別」や合理的配慮について説明した。また、2011年に権利条約批准に向けて改正された障害者基本法では、その総則において権利条約にもとづいた「社会的障壁」や差別禁止の定義がなされ、各則において医療や雇用、住宅、バリアフリーなど対応する分野事業が提示されていることを述べ、最後に、差別解消法における差別類型とそれぞれの具体的な事例を示した。

 第2部は、世界人権問題研究センター専任研究員の松波めぐみ氏をファシリテーターとして実際の事例にもとづいたケーススタディをグループワーキング形式で展開した。ケース毎に分かれた3つのグループにおいて、職場や公共交通機関でおこった事例について「それぞれの事例は差別とみなされるのか」「差別または差別でないとしたら、それはなぜか」「障害者になされた対応は合理的な配慮といえるか」といったことがらについて議論したうえで、最後にそれぞれのグループの論点等の報告がおこなわれた。

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 これまで3回の連続セミナーを実施したことにより、障害者権利条約の意義付けや2011年の障害者基本法の改正と差別解消法との関係について、学生や一般市民、そして障害・病をもつ当事者とともに理解を深めることができただけでなく、今回実施した具体的なケースにもとづくグループディスカッションは、講演者と参加者がインタラクティブに議論することで相互理解を深める新たなセミナー形式を確認する場ともなった。ひきつづき、障害者や病者をめぐる新たな制度・政策を理解し構想する場として、本セミナーはさらに展開されていくことになるだろう。

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(立命館大学生存学研究センター)